8人が本棚に入れています
本棚に追加
すでに煙草を何度も吹かし、
砂利道を蹴りながら速足で歩く、
野副義承。
四十三にもなって、
あからさまに子供じみた不貞腐った素振り。
たかが一年足らずで、
コンビと呼ぶには恐れ多く、
まだまだ力及ばずながら、
ようやく師弟関係を築きつつある後輩の畠山瑞希には、
後ろ姿から野副の全てが
お見通しだ。
荒々しく車に乗り込むや、
決まって助手席でリクライニングを倒す野副。
隣の運転席が、
畠山の特等席。
「私たちは兎も角、
所轄の事件に一係が出動する理由でもあったんですかね」
彼女にとって、
今さら野副の顔色に配慮は不要だが、
短時間で蒸し風呂と化した
車内で、
気を紛らわせる他愛もない、
ほんの些細な問い掛け。
「担当じゃないヤマに興味は無ぇよ。
それにしても、
暑いな!」
当然と言えば当然の返しに、
畠山は生温い空調の風で、
その場しのぎの頭を冷やす。
最初のコメントを投稿しよう!