ただ、赤く濁る

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 また、 身近で人が死んだ。 知る、 知らないだけで、 死なない選択肢はない。 そこに自分がいるだけで、 ただ、 死ぬ。  そう言う存在として、 僕は今日も、 ただ、 生きている。  両眼を五秒と開け続けている事すら、 煩わしくなる酷暑。 目玉の、 特に黒目目掛けて、 日光は剥き出しの殺意を突き射す。 白んだ苛立ちの靄は熱を帯び、 肌の表面を下から上へと容赦なく滑空して行く。 物々しく噎せ返る現場は、 一様に汗ばんだ感情のオンパレード。 野次馬も関係者も皆、 心は自分だけのオーダーメイドを決め込み、 しかし、 それに体の動揺が似合わず、 これが、 すでに『一般人』のセンスの 限界だった。
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