ただ、赤く濁る

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 そこに熱風を連れ、 淡々と駆け入る人種は、 やはり普通とは 異なって見える。 『警察』と言う異形の者に、 畏怖の目は存分に注がれた。 「どうぞ、 こちらです」 弱々しく誘導する、 ここの現場責任者であろう中年男性の顔色は、 青から白へと、 みるみる不気味なグラデーションを進め、 片や健康的に血色の良い女性刑事が、 この場面では心なしか悪役に映るから不思議だ。  屋外から屋内で、 これだけ暑さの質の違いに、 まずは驚く。 ここは小さいなりにも、 積年の重みを感じる鋳造工場。 鈍色なモノトーンを基調にした、 極めてノスタルジックで、 感傷的な1シーンに安心を添えるには、 やたらとビビットな色に染まるマシーン。
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