ただ、赤く濁る

8/134
前へ
/142ページ
次へ
「野副さん、 ご苦労様です。 後は我々が仕切りますので、 代わって頂けますか」 陣頭で進路を塞ぐ、 本庁捜査第一課・殺人犯捜査一係の橋爪。 高身長で面長。 細身ながら肩幅は広く、 高圧的な低い声のトーンで、 丸ごと威圧感の塊みたいな男だ。 それに対し、 怯む事なく、 変わらぬ背丈の粗暴な男が、 覗き込む様に顔を近付けた。 「おい、 橋爪よぉ。 俺をこき使って、 さすがに良心の呵責でも働いたのか?」 三~四人の取り巻きが、 明らかに構えの重心を前に向けた。 ただ一人橋爪だけは、 地面から垂直の姿勢のまま微動だにしない。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加