ただ、赤く濁る

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「わざわざテメェたちが出向いて来て、 代わるも代わらねぇも、 こっちは端から 受け持つ気なんか無ぇんだよ。 あんまり上から物ばかり言ってるとなぁ、 下に転がる尖ったゴミが見えなくなるぞ」 橋爪が掛ける黒縁眼鏡の片側レンズに、 男はハッ! と一息噴射すると、 返り血と 埃に塗れた、 作業着姿の尖ったゴミを足元に放り投げ、 取り囲む連中を掻き分けながら外へと出る。 「後は、 よろしくお願いします」 あくまで、 非礼を詫びるついで。 形だけの敬礼を残し、 そそくさとその後に続く 女性刑事。 曇ったレンズもそのままに、 橋爪は無表情で後ろをそっと振り返った。
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