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「……すぐには無理だと思うんだが」 「時間がかかってもがんばります。なので、お願いいたします」 わたしはぺこりと頭を下げる。 サイトウさんは、どうしようかと迷っているようだが、「ええやん、ええやん」と殿さまがモチーフになっている着ぐるみがわたしの味方についてくれた。 彼の名前はトノサマ、という。 一見、ふざけたような名前だが、彼らに名前なんてあってないようなものだ。 彼らは概念でしかない。 彼の身体はぬいぐるみのため、あらかじめ作られた表情でしか会話が出来ない。 中からくぐもった声だけが聞こえる。 表情は、ない。 だが、自由に動くことはできる。 「この子がわしら喚べたら、サイトウはんの負担も減るやろ」 「サトウさんもです」 「良いこと尽くめやん、なあ」 「ふーん……まあ、この子が召喚出来るようになってもお前の契約者は変えないからな」 「ギクッ。べべべ別にそんなこと考えてへんよ。イヤやなぁ、サイトウはん。深読みせんといて」 「トノサマ、わかりやすいくらいに動揺しているね」 「そこはシーッや!」 暑苦しく指を口に当てた顔を近付けて来たのを無視してサイトウさんにお願いする。
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