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「それはともかく、どうして井戸があるかを解明しましょう」
楓翔は早速井戸を触りながら言う。ひんやりとしたコンクリートの感触にテンションは密かに上がっていた。夏場にこれだけ冷たいとなると森だけのせいとは思い難いからだ。
「そうだな。我が校の最大の謎になるぞ」
莉音に文句を言いたかった亜塔だが気持ちを切り替える。今は自らの好奇心を満たすのが先だ。
「しかしこれ、新入生は興味を持ちますか?」
千晴は遠慮のない突っ込みを入れることにした。調査が本格化してからでは手遅れである。
新入生をゲットするために始めたはずの七不思議調査がただの地質調査になろうとしているのだ。危機感を持って当然である。これでは若者は興味を持たないだろう。何より今や国営放送の某番組を真似していてドラマのほうは忘れられている。
「ううん。そうか。若人受けしなくてはならないんだった。何か興味を引くような井戸にまつわる話はないだろうか」
桜太がようやく最初の目的を思い出した。ただ謎を解明して終わりではないのである。怪異現象であるというのは重要な要素だったのだ。
「ないって。今まで俺がどれだけ井戸の存在を信じてもらえなかったと思っている。井戸にまつわる話なんて断じてない」
亜塔が状況を絶望的な方向へと追いやってしまう。それに井戸があることが不思議で何が悪いとも思っているのだ。
「これ、井戸というより雨水を溜めておくものですかね」
勝手にトタンを捲っていた楓翔がそんな感想を漏らす。どうやら下に掘ってはいるものの水源に当たっていないらしい。冷たかったのは中に湿気が溜まっていたせいだった。
「ええっ。ただの貯水タンク?」
もはや井戸ですらない。その事実に全員が井戸を覗き込んだ。するとたしかに水はちょろっとしか入っていない。
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