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「わかった。今行くよ」
私が手を離したからか、類は一気に不機嫌な表情になった。
「類、期待させるのも嫌だからやっぱりちゃんと言っておくけど。私が類を好きになる事はないから」
こういう事はやっぱり初めに言っておいた方がいい。
今なら、まだ何も始まっていない。
何事もなかったように、元通りの関係に戻れる。
私と類は、ただのイトコ。
ただそれだけの、関係なのだから。
「莉菜はホント何もわかってないよね」
「類よりはわかってるよ」
「わかってないよ。……俺はもう戻るつもりはないんだよ。ただのイトコの関係には」
私を鋭く見つめてそう言い放った類は、不機嫌な表情のまま豪と愛ちゃんがいるリビングへ戻って行った。
類の想いに完全に押されかけている、私を残して。
今ならまだ、ついこの間までの関係に戻れると思っていた。
類の気持ちは聞かなかったフリをすればいいと思っていた。
だけどもう本当に、それは無理なのかもしれない。
ただのイトコには、もう、戻れないのかもしれない。
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