ボーダーライン

26/27
前へ
/27ページ
次へ
動けない。 言葉も出てこない。 なのに、視線だけは彼から離せない。 「莉菜のそんな顔見れるなら、もっと早く素直になっておけば良かった」 「……そんな顔って?」 「俺の事意識してる顔。初めて見た」 そんな嬉しそうに微笑まないで。 私は類の気持ちに応える事なんてできないんだから。 「類。気持ちは嬉しいけど……」 「あ、今返事とか聞く気ないから」 「え……」 「莉菜が言おうとしてる事なんて、手に取るようにわかるし。だけど俺が求めてるのはそういうのじゃないから」 「そういうのじゃないって……」 「類くん?豪が呼んでるよー」 突然リビングの扉が開き、愛ちゃんが少しだけ顔を出す。 私は慌てて、類に掴まれていた手を離した。 こんな所見られて、誤解されたら困る。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

321人が本棚に入れています
本棚に追加