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「賢ちゃんには言ったの?今回の事」 「まだ言ってない。今日久し振りに仕事の後会う約束してるから、そのとき言おうと思って」 賢は昔からやたらと心配性で、私が恋をする度にいろいろ口出してくるちょっと面倒くさいヤツ。 ある意味、親に報告するより面倒くさいかもしれない。 「でもさぁ、別れて良かったのかもよ」 「え?」 「だって椿、結婚したいって思える程本当に瑛祐くんのこと好きだったの?」 美月のその言葉に、思わずネイルを塗っている手の動きを止めそうになった。 「……好きだったに決まってるでしょ」 「本当に?」 「何で今更そんな事言うのよ」 「だって、椿が誰かに夢中になってるとこ今まで見たことないもん」 そんな事ない。 好きな人ができたら、いつだって真剣だし、いつだって夢中になっていた。   そのはずなのに、口には出せなかった。   「仕事が手につかなくなるくらい、夢中になった恋ってある?」 「それは……」 「私は今までの椿の恋愛、全部知ってるけどさ。椿が熱くなってるとこって、見たことないんだよね」
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