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「しないなら、言う。俺にキスしてくれんなら、言わない。それだけだよ。悪いけど、見逃す気はないから」
「……」
本当は、見逃してくれるんじゃないかって一瞬期待したけれど、どうやら本気で逃がす気はないようだ。
「どうすんの?」
不本意だけど、仕方ない。
豪には絶対、知られたくない。
「……じゃあ、あとでキスする」
「何それ」
「だって、もう地上に着くもん」
あっという間に頂上は通り過ぎ、もうすぐゴンドラは地上にたどり着く。
やっぱりここは、あとでキスするって言って、もう誤魔化して帰るしかない。
「あの係員の人に見られたくないの」
「……わかったよ。じゃあ、後でね」
意外とあっさり類が納得してくれて、ほっとした。
結局2周もしてしまった観覧車を降りて、やっと遊園地をあとにする。
「すっかり遅くなっちゃったね。類、明日は仕事でしょ?」
「仕事。多分明日からまた残業かな。最近すげぇ忙しいんだよね」
忙しいのに、今日わざわざ私に合わせて休み取ってくれたのかな。
そう思うと、急になんだか申し訳ない気持ちに襲われる。
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