前の彼女の存在

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翌日、気を取り直して仕事に取りかかる。 昨日、結局あの子が何時まで家にいたのかはわからないけれど、結構遅くまで豪と話している声が微かに聞こえていた。 何を話していたんだろう。 類とヨリを戻す作戦とか……? 「……莉菜さん?大丈夫ですか?」 「あ……ごめんなさい!」 ネイルの施術中なのに、完全に手が止まっていた。 最悪だ。 仕事中に他の事を考えるなんて、あり得ない。 せっかく私のネイルを楽しみに来てくれているのに。 「……莉菜さん、何かあったんですか?」 そう言って、心配そうに私の顔を覗き込むのは。 本日午後3人目のお客様。 この間も来てくれた、シンガーソングライターの渚ちゃん。 「ごめんね。何でもないの」 「莉菜さんって、嘘つくのヘタですよね。私も、人の事言えないですけど」 「……」 昔から、嘘をついても顔や態度に出てしまうのかすぐにバレてしまう。
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