前の彼女の存在

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「もしかして、この間話してた、イトコの男性と何かあったんですか?」 やっぱりわかるよね。 こんなにわかりやすく、ぼーっとしていたら。 「あのね。ずっと嫌いだった人を、好きになる事なんてあると思う?」 「え?嫌いだった人をですか?」 私は確かに類の事を嫌いだったはずだ。 初めて、キスを奪われたあの日から。 私の中ではずっと『可愛い弟』だった類。 だけどあの日から、彼の見方は変わった。 「うーん……でも、そういう事ってよくあるんじゃないですか?」 「よくあるの?」 「例えば、この人苦手だなぁと思ってた人に実は凄くいい所があって、それをわかってしまったら、嫌いな感情って薄れません?」 確かに、男女関係とかじゃなくても、そういう事はよくあるかもしれない。 「でも、嫌いが薄れるとかじゃなくて、完全に好きになってしまうとかって、普通はないよね?」 「嫌いな人を完全に好きにですか?確かに私は経験ないですけど……」   「やっぱり、そうだよね」 聞きたかった答えが聞けて、ほっとする。 普通は、そうだよね。 やっぱり今私が類にドキドキしているのも、何かの間違いなんだ。
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