前の彼女の存在

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「それって、そのイトコの人の事ですか?」 「え?あ、うん、そうなの。昔から、何となく苦手っていうか、嫌いだったんだけど」 思わせぶりな発言をするところとか。 私の反応を見て、楽しむところとか。 かと思ったら、突然彼女を連れて家に遊びに来たり。 昔から、そういう事がよくあった。 その度に私の胸の中は、きっと密かに動揺していた。 だから、そんな類の事が嫌だった。 「でも、もし嫌いだった人を好きになる事があるなら、きっと、もともと嫌いじゃなかったんじゃないですか?」 「え……?」 「本当は好きになるのが怖かったから、嫌いだと思い込むようにしていたとか。それなら、後から好きだと自覚しても、おかしくないですよね」 ……そんな風に、思った事はなかった。 そして、渚ちゃんが今言った考えが、ピタリと何かを言い当てられたような気持ちにさせた。
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