262人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁ、時間がかかる事ぐらい最初から覚悟してたから。ゆっくり待つけどね」
ついこの間までは、類の事なんて絶対好きにならないって言葉にして言えたのに。
恋愛対象外でしかなかったはずなのに。
一度芽生えたら、その想いはどんどん増幅していき、抱えきれないくらい大きくなる。
「莉菜、支度できた?帰るよ」
「……うん」
私は、狡い人間だと思う。
この想いを認める勇気なんて、少しもないくせに。
類の優しさに、甘えてしまっている自分がいる。
類の好意を、嬉しく思っている自分がいる。
一歩も踏み出す勇気なんてないくせに。
前の彼女のところには、戻ってほしくない。
そんな自分本位な欲ばかりが、溢れてくる。
類に家まで送ってもらった、帰り道。
隣で歩く彼を見つめながら、私はそんな事ばかり考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!