前の彼女の存在

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「まぁ、時間がかかる事ぐらい最初から覚悟してたから。ゆっくり待つけどね」 ついこの間までは、類の事なんて絶対好きにならないって言葉にして言えたのに。 恋愛対象外でしかなかったはずなのに。 一度芽生えたら、その想いはどんどん増幅していき、抱えきれないくらい大きくなる。 「莉菜、支度できた?帰るよ」 「……うん」 私は、狡い人間だと思う。 この想いを認める勇気なんて、少しもないくせに。 類の優しさに、甘えてしまっている自分がいる。 類の好意を、嬉しく思っている自分がいる。 一歩も踏み出す勇気なんてないくせに。 前の彼女のところには、戻ってほしくない。 そんな自分本位な欲ばかりが、溢れてくる。 類に家まで送ってもらった、帰り道。 隣で歩く彼を見つめながら、私はそんな事ばかり考えていた。
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