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いたたまれない気持ちになり、さり気なく豪と彼女の後ろを通り過ぎて部屋へ行こうとしたとき。
豪と話していた彼女が突然、凄い勢いで私の方を振り返った。
驚いた表情で、私を見つめる類の元彼女。
急に、何……?
「あの……?」
「お姉さん……今日、類に会いました?」
その瞬間、私の顔色はきっと変わったと思う。
「え、マジで?姉ちゃん今日、類と会ってたの?」
「……会ってないけど、どうして……?」
1日中一緒にいたなんて、言えなかった。
私の声は、震えていないだろうか。
どうしてこの子、わかったの……?
「……そうですよね。すみません変な事言って。何か、類の香りがしたような気がしたんで」
類の香り……。
今日、確かに私は彼に密着していた。
あの観覧車の中で。
だけど香りが移っていたなんて、ずっと一緒にいたから全く気がつかなかった。
「お姉さんは、類と仲良いんですか?」
「……普通だよ。……イトコだから」
「そっかぁ。イトコなんだから、仲が良いのは普通ですよね」
そう言って、彼女はニコリと私に向かって微笑んだ。
私の顔は、完全に強張ってしまい、少しも笑えなかった。
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