前の彼女の存在

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着信相手を確認した瞬間、私はすぐに電話に出た。 「も、もしもし……」 「あ、椿?今日の休み、何してたー?」 美月の、いつも通りの明るい声に、心底ほっとした。 「何してたって……美月が1番知ってるでしょ」 「あっやっぱりバレてた?類くん、喋っちゃったんだ」 「美月、どういうつもりよ。類に連絡したりして……」 「だってさぁ、類くんもしかして、椿に気があるんじゃないかなーと思って。イケメンだし、いいじゃん」 「いいじゃんって、あのねぇ……」 「それより、どうだったの?デート。楽しかった?」 ……楽しくなかった、といえば、嘘になる。 「……別にデートじゃないし」 「はぁ?デートでしょどこからどう見ても。ねぇ、どこ行ったの?」 「横浜。水族館とか、遊園地とか」 「えっもしかしてあの観覧車乗ったの?超ロマンチックじゃん!」 女はやっぱり何歳になっても、ロマンチックなものにキュンとしてしまう。 もちろん私も、例外ではない。
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