16年間の優しい嘘

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『俺の方こそ、ごめん。椿に会いたい。俺はいつでもいいよ。』 いつでもいい、か。 それなら、早い方がいい。 でも今日の夜は仕事終わるの遅くなりそうだし、明日も夜遅い時間に予約が入っている。 『じゃあ、明後日の夜でもいい?』 ……送信。 さっき届いたばかりの賢からのメールをもう一度見直す。 『椿に会いたい』 決して自惚れているわけじゃないけれど、この一言に賢の想いが込められている気がした。 その後すぐに賢から承諾のメールが返ってきた。 こうして2日後、いつも2人で飲みに行く居酒屋で会うことになった。 メールが終わり、仕事へ向かう準備をしながら賢と初めて出会った日の事を思い出す。 中学校に入学したばかりのとき。 たまたま私の隣の席だったのが、賢だった。 「お前、デカいな」 「は?」 初対面でいきなりデカいと言われた。 その頃私は、背が他の友達よりも高いことがちょっとしたコンプレックスになっていた。 そんなときにこんな事を言われたから、失礼なヤツだと思っていた。
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