16年間の優しい嘘

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恋の相談だって、今まで数えられないくらい沢山してきた。 もちろん賢から相談を受けた事だって、何度かある。 まだ今よりも若かった頃は、失恋した直後、深夜なのも関わらず賢の家に行って愚痴っていた事もあった。 「賢、フラれたぁ……」 「また?今回どれぐらい続いたっけ」 「今月でちょうど半年だったの」 「フラれた理由は?」 「……ガサツ過ぎるって。一緒にいると、イライラするって」 「お前がガサツなのは昔からだから、しょうがない」 「でしょ?どうやったって、繊細になんてなれないし、几帳面にもなれないし」 そして賢のくどいくらいの説教が始まる。 ただ、賢に愚痴を聞いてもらうだけでいつも気持ちが楽になっていた。 「よし!今から美月も呼んで飲もう!」 「お前、今何時かわかってんの?俺、明日仕事なんだけど」 今思い返せば、私は賢と出会って16年間、ずっと彼の優しさに甘えていたのかもしれない。
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