16年間の優しい嘘

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翌朝。    目を覚ますと、類の姿は跡形もなかった。 だけど私の左手には、類の温もりがまだ残っている気がした。 ゆっくりと起きあがると、まだ頭は少し痛かったけれど、昨日の熱っぽさは消えていた。 「良かったぁ……」 これなら、仕事に行けそうだ。 早速シャワーに入るためにリビングへ行くと、豪が朝食のパンを食べながら朝の情報番組を見ていた。 「おはよ姉ちゃん。昨日風呂で寝たくせに、またシャワー入んの?」 「だって夜中汗かいちゃったんだもん」 「ふーん。あ、そういえばさ、昨日の夜中、誰か家に来てなかった?」 ……まさか、豪、起きてたの? 「わかんない……私体調悪くて寝てたから……」 「そっか。いや、俺も寝てたんだけどさ。なんか玄関でガタガタ音鳴ってた気がしたんだよね。気のせいだったのかな」 「……気のせいなんじゃない?」 「だよな~あんな夜中に誰か来るわけないよな」 豪がもうちょっと鋭い人だったら、きっと玄関の物音を気のせい、だなんて納得しない。 自分の弟ながら、鈍くて単純で良かったなぁと心底思った。
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