16年間の優しい嘘

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駅を降りて、家までの道の途中にある公園まで小走りで向かうと、公園がやっと視界に見えてきた。 そして公園のベンチには、こっちを見て座っている賢がいた。 「また走ってきたの?ほんとお前、俺と待ち合わせのときっていっつも息切らせて現れるよな」 「だって……ごめん待たせて……」 「待たせてるのなんて、いつもの事じゃん」 そう言って賢は、微糖の缶コーヒーを飲みながら少し笑った。 「とりあえず、隣、座れば?」 「……うん」 「はい、お前はジュース」 賢の隣に座り、缶ジュースを手渡される。 見るとそのジュースは、私が高校生の頃にハマっていたジュースだった。 「うわ、懐かしい!」 「だろ?ここの自販機に売ってんの見て、ちょっとウケた。お前昔よくそれ飲んでたよな。たいして旨くもないのに」 「美味しかったし。ていうか、賢が味オンチなだけじゃん」 みかんの粒々がたっぷり入った、どこにでもあるようなオレンジジュース。 高校生の頃、売店でいつもこればかり買って飲んでいた。 よく、賢と美月にバカにされていたのを思い出す。
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