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「あとお前、売店に売ってたマズいカレーパンにもハマってたよな」
「だからあれも美味しかったってば」
「美月と俺は同じ味覚だったけどね」
「賢だって、変な味の駄菓子にハマってたじゃん」
「味オンチって、可哀想だよなー。あの駄菓子の旨さがわかんないなんて」
完全に、大人の男女がするような会話じゃない。
だけどやっぱり賢とは、いつだってこんな感じになる。
そしてこの感じが、やっぱり私は好きだった。
恋とか愛とか、そういうものじゃなくて。
家族のような、好き。
「あの頃は楽しかったよな」
「うん。……そうだね」
「まぁ、今でもあの頃と大して変わりはなかったけど」
「……うん」
「けど俺、多分あの頃から、好きだったのかなお前の事」
私は手に持ったみかんのジュースを見つめながら、賢の言葉をただ黙って聞いた。
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