16年間の優しい嘘

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「あとお前、売店に売ってたマズいカレーパンにもハマってたよな」 「だからあれも美味しかったってば」 「美月と俺は同じ味覚だったけどね」 「賢だって、変な味の駄菓子にハマってたじゃん」 「味オンチって、可哀想だよなー。あの駄菓子の旨さがわかんないなんて」 完全に、大人の男女がするような会話じゃない。 だけどやっぱり賢とは、いつだってこんな感じになる。 そしてこの感じが、やっぱり私は好きだった。 恋とか愛とか、そういうものじゃなくて。 家族のような、好き。 「あの頃は楽しかったよな」 「うん。……そうだね」 「まぁ、今でもあの頃と大して変わりはなかったけど」 「……うん」 「けど俺、多分あの頃から、好きだったのかなお前の事」 私は手に持ったみかんのジュースを見つめながら、賢の言葉をただ黙って聞いた。
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