16年間の優しい嘘

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まだ微熱はありそうだけど、昨日の夜よりは確実に身体が軽い気がする。 熱いシャワーを浴びて浴室から出ると、朝食を食べ終えた豪が会社に行く準備をしていた。 「あ、そういえば姉ちゃん、昨日の夜また母さんから電話きたよ」 「お母さんから?なんて?」 「あんたいつまで莉菜の家に居候するつもりなのっ!?ていう俺への説教と、姉ちゃんに新しい彼氏出来たかの確認」 お母さん、焦りすぎだから。 別れたって報告したの、つい最近だった気がするんですけど。 「でも姉ちゃんも、俺がいなかったら寂しいはずだって言ったら、母さん案外すんなり納得してたよ」 「お母さんったら……豪に甘すぎ」 なんて言っている私も、多分弟には結局甘いんだと思うけど。 「で、姉ちゃん新しい男は?どうなんだよ最近」 「別にいないけど。ていうか、つい最近もそれ聞いて来なかったっけ」 「だって先週愛がここに来て姉ちゃんに会ったじゃん?したらあの後愛が、『莉菜さん、恋してる顔してた』だなんて言うからさー」 恋してる顔……ってどんな顔……? ていうか、さすが愛ちゃん。 女性特有の、鋭さを兼ね備えている。
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