16年間の優しい嘘

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「……」 賢が誰とも続かなかったのは、ただ飽きっぽいんだと思っていた。 それか、賢の細かい性格に彼女の方が嫌気が差したか。 だけど、その理由に私が関わっていたなんて。 どうしよう。 何て言ったらいいのか、わからないよ。 「賢……私……」 「こんな事言ったって、お前が困る事ぐらいわかってたよ。お前が男として俺を見てない事も、ちゃんとわかってた」 だったら、言わないでほしかった。 正直、賢のさっきの言葉で、一瞬だけドキッとしてしまった。 賢にドキドキするなんて、あり得ないと思っていたのに。 「でも、類の事で悩んでるお前見てたら言わずにはいられなかったんだよ」 「……」 胸が、苦しい。 賢の声を聞く度に。 「椿」 名前を呼ばれて、私はやっと顔を上げた。 賢は、切ない表情で私を見ていた。
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