16年間の優しい嘘

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「……泣くなよ」 そう言われるまで、涙が溢れている事に気付かなかった。 私は慌てて頬を伝う涙を拭う。 「……泣いてない」 「俺、初めて見たかも。お前が泣いてるとこ」 「泣いてないってば」 「素直じゃねーなホント。何、泣くほど嫌なわけ?俺の事」 「そうじゃなくて……!」 「ほら、これ。使え」 そう言って賢は、チェック柄のハンカチを手渡してきた。 「お前どうせ、ハンカチとか持ってないだろ」 「……ハンカチ持ってる男の方が、どうかと思うけど」 「はぁ?お前なぁ、今どき男だってハンカチぐらい……」 「ウソ。……ありがと」 私は、賢のハンカチで涙を拭いた。 どうして今、この場面で泣いてしまったのかなんてうまく説明出来ないけれど、涙はしばらく止まらなかった。
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