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「でも……本当に困ったときは、相談して来い。俺は多分、しばらくお前以外の女なんて好きになれないけど。話ぐらいなら、聞いてやるから」
賢はそうやって、少し寂しそうに笑った。
私がまた泣いてしまいそうな事ばかり、平気で言う。
この先、私が類との事を賢に相談なんて、出来るはずないのに。
賢の気持ちを知ってしまった以上、私達はもう元の関係には戻れないんだから。
「賢。……ありがとう」
出会った日から今日まで、16年もの間。
ずっと、傍にいてくれてありがとう。
「仕事、頑張れよ。応援してるから」
「……うん、ありがとう」
賢はゆっくりと立ち上がり、コーヒーの缶を片手にその場を去って行った。
私はその後ろ姿を、ただひたすら見つめていた。
見えなくなるまで、ずっと。
彼の姿を、目に焼きつけた。
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