16年間の優しい嘘

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「賢ちゃんは椿から聞いてって言ってたんだから早く言ってよ。そんなに言いづらい事なの?賢ちゃんとケンカでもしたの?」 「ケンカはしてないけど……」 「じゃあ何?賢ちゃんに襲われた?なーんて、それはないか」 電話の奥で、ケラケラと笑う何も知らない親友。 だけど、私が黙っていると、美月の声色が一気に変わった。 「ちょっと何で椿黙って……は?ちょっと待って、ウソでしょ?」 「襲われてはないよ!……でも、キスされた」 「キ……えぇ!?ウソ!!」 耳がキーンと痛くなるくらい、響き渡る美月の大きな声。 電話の奥で美月の子供が、「ママうるさい」って言ってる声まで聞こえてくる。 「賢ちゃんにキスされたって、本当に?マジなの?それ。椿の妄想じゃなくて?」 「そんな妄想しないし」 「超ビックリした……ていうか、賢ちゃん、椿の事好きだったの?全然気付かなかったけど」 「だよね?やっぱり、そんなの気付かなかったよね?」 「私そういうのは鋭い方なんだけどな。魔が差してキスしちゃったんじゃないの?酔ってたとか」 でも、賢は出張帰りで酔ってなんていなかったし。それに、魔が差してキスするとか。 賢は、そんな人じゃないって私が1番わかってる。
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