『好き』が溢れる瞬間

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賢がいなくなった後、しばらくその場から動けなかった。 賢が買ってくれたみかんジュースを飲み干すまで、ベンチに座って夜空をぼんやり見つめていた。    星なんて、全く見えないけど。 俯いたら、涙なんて簡単に零れるから。 「……よし」 とりあえず、家に帰ったら類に今日の賢との事をメールしよう。 あとは美月にも……一応話しておいた方がいいかな。 いろいろ心配してくれていたし。 公園のゴミ箱に空き缶を捨てて、自宅に向かう。 ここの公園から、マンションまでは本当にすぐだ。 少し歩くと、もう目の前にはマンションが見えてきた。 賢とはもう本当に、このまま会う事はなくなるのかな……なんて思いながら、マンションのエントランスに足を踏み入れたときだった。 「莉菜さん、お帰りなさい」 背後から、聞き覚えのある声がした。 振り向いて、思わず私の体は恐怖で震えてしまった。
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