『好き』が溢れる瞬間

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「でしょ?だから私、納得出来なくて……」 「でも俺は、莉菜がいいんだよ。未来と付き合う、ずっと前から。……莉菜ばっかり見てたから」 「私と付き合う前からって……」 「莉菜が別れたって聞いて、すぐに近付いたのは俺の方。莉菜が俺を誘惑なんて、絶対にあり得ないから」 類の真っ直ぐ過ぎる言葉が、キッチンの方にもちゃんと響いて聞こえてくる。 私は、その言葉が、どうしようもない程嬉しかった。 「だから、恨むなら俺にして。俺が未来を裏切ったわけだし」 「……私に悪いと思ってないの?」 「思ってるよ。本当に、悪いと思ってる。でも、後悔はしてない」 「……私は、別れたくない」 「俺は未来を好きじゃないよ」 「それでもいい!それでもいいから、類といたいの……」 私は完全に、コーヒーを運ぶタイミングを失った。 2人の会話に入ることも、出来なかった。
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