『好き』が溢れる瞬間

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「莉菜、コーヒーちょうだい」 「え、あ、はい!」 急に声をかけられて、慌ててコーヒーをトレーに乗せてリビングへ運ぶ。 未来ちゃんの分と、類の分。 「何で手、震えてんの?」 類がふっと笑いながら、カップを持つ私の手が震えている事にすぐ気付く。 ほんと、目ざといな。 「うるさいな。緊張してるの」 「緊張?何で?ここ、莉菜の家じゃん」 ここが私の家だろうが他人の家だろうが、この状況で緊張しないわけないでしょ。 と、突っ込みたくなるのをグッと抑える。 ていうか、この状況で、何でこんな余裕なの?類は……。 「あ……未来ちゃん、砂糖とミルクは…?」 「……もらいます」 「類もミルクと砂糖入れるよね」 そう言うと、すぐに未来ちゃんが言葉を被せてきた。 「類はブラックですから」 「え?類、ブラック飲めるようになったの?」 「俺を何歳だと思ってんの?」 類は昔は、コーヒーはミルクと砂糖を入れないと飲めなかったのに。 こんな些細な事だけど、やっぱり昔とはいろいろ違うんだな、なんて改めて思う。
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