最初から決まっていた運命

2/25
前へ
/25ページ
次へ
いつから、彼女を好きになったのか。 いつから、彼女しか見えなくなったのか。 そんなのもう思い出せないくらい、気がついたら夢中になっていた。 「……類」 彼女が俺の名前を呼ぶ度に、自分の名前を好きになっていくような感覚があった。 家族が呼んでも、友人が呼んでも。 何も感じないのに。 彼女の言葉だけが、俺の心をいつも揺さぶった。 綺麗な顔で、豪快に笑う彼女。 笑ったときに、片方だけクッキリと浮かぶえくぼ。 褒められると、嬉しいはずなのに精一杯その嬉しさを隠そうとするところ。 実はもの凄く心配性で。 気も強そうに見えるけど本当はめちゃくちゃ弱いところ。 幼い頃、兄弟がいない俺の寂しさを、誰よりも一番先に気付いてくれた人。 優しくて、愛らしくて。 笑顔が可愛くて。 幼い頃から、知っているのに。 ……だけど、誰よりも手の届かない存在だった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

236人が本棚に入れています
本棚に追加