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いつから、彼女を好きになったのか。
いつから、彼女しか見えなくなったのか。
そんなのもう思い出せないくらい、気がついたら夢中になっていた。
「……類」
彼女が俺の名前を呼ぶ度に、自分の名前を好きになっていくような感覚があった。
家族が呼んでも、友人が呼んでも。
何も感じないのに。
彼女の言葉だけが、俺の心をいつも揺さぶった。
綺麗な顔で、豪快に笑う彼女。
笑ったときに、片方だけクッキリと浮かぶえくぼ。
褒められると、嬉しいはずなのに精一杯その嬉しさを隠そうとするところ。
実はもの凄く心配性で。
気も強そうに見えるけど本当はめちゃくちゃ弱いところ。
幼い頃、兄弟がいない俺の寂しさを、誰よりも一番先に気付いてくれた人。
優しくて、愛らしくて。
笑顔が可愛くて。
幼い頃から、知っているのに。
……だけど、誰よりも手の届かない存在だった。
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