君しか見えない

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それから数日は出張が入ってしまって、莉菜に連絡出来ない日々が続いた。 正確に言うと、しようと思えば連絡出来たけど、敢えて俺からはしなかった。 連絡しない日が続いた方が、莉菜が俺を意識してくれるんじゃないかっていう稚拙な計算。 こんな駆け引きみたいな事をして、相当カッコ悪いけど、俺はとにかく必死だった。 どうにかして、少しでも俺の存在を彼女の中に植えつけたい。 そんなとき、掛かってきた電話。 「類?最近、元気でやってるの?」 たまに掛かってくる、母親からの電話。 普段から、両親と仲が悪いわけではない。 むしろ俺は一人息子だから、幼い頃から大事に育てられた方だと思う。 だけど社会人になって一人暮らしを始めてからは、あまり実家に立ち寄る事はなくなっていた。 「うん元気でやってるよ。母さんは?」 「私は元気よ。それより類、たまには家に帰って来たら?仕事忙しいの?」 「あぁ……うん最近ちょっと忙しいんだよね。でも落ち着いたら近い内に一度帰るよ」
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