一秒きりのキス

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出張から帰ってきて、まず俺は莉菜に電話を掛けた。 電話に出てくれなかったらどうしようか、なんて一瞬弱気な考えも頭をよぎったけれど。 莉菜は電話に出てくれた。 数日ぶりに聞く彼女の声に、簡単に心がざわつく。 「俺も月曜仕事休み取ったから。空けておいて」 「あのね類。勝手に私の予定決めないでくれる?それに来週の月曜は美月の家に遊びに行くから無理だし……」 「じゃあそれキャンセルしてよ」 「キャンセルって、無理だから」 「いいじゃん美月さんとならいつでも会えるだろ。とにかくそういう事だから、よろしく。近くなったらまた連絡するから」 「ちょ、よろしくって言われても……」 まだ莉菜の声が電話の奥から聞こえている最中に、電話を切った。 話が長くなったら、絶対に断られるに決まっている。 ……どれだけ余裕ないんだ、俺は。
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