6/6
前へ
/106ページ
次へ
「賢雄<けんゆう>。だいぶ様<さま>になってきたなぁ。 豊<とよ>さんも、ちっと楽になってきたんじゃないか?」 休憩時間に、応援に来ていた親父の古い仲間の田尾<たお>さんが話しかけてきた。 オレのことを生まれたときから知っている人。 昔は親父と同じ工務店に勤めていて、親父が独立したと同時に田尾さんも独立したと聞いている。 「そうっすか? 親父からしたら、まだまだみたいっすけどね。」 オレは缶コーヒーを片手に、向こうで他の応援者と話をしている親父の方を見ながら言った。 「賢雄の前じゃそんな事言ってるかも知れんけどな、組合とかではちゃぁんとお前のこと一人前だって認めてて、誉めてんだぞ。 親バカだ、ハハハッ。」 田尾さんは豪快に笑いながら、オレの背中をバンっと叩いて、親父たちの方へと行った。 親父がオレを一人前だと認めてくれている…。 内心、嬉しかった。 今日、無事に上棟式も終え、応援してくれた人たちにお礼を言って解散となった。 そんな時、ふとまた彼女の笑顔がよみがえった。 また明日もあの笑顔を見れるだろうか。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加