一、プロローグ

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 河川敷、それも鉄橋の下は、何故にこれほどまでに治安が悪いのか。  倒されガタガタとなった自転車と、必死で貯めた小遣いの入った財布を嬉しそうに見ながら分け前を算段する奴らを力無く見つめ、取り敢えず何もしない事に決めた。  世の中は誰に対しても厳しい。  勿論助けなど来ない。  何人か犬の散歩をしながらランニングする大人を見たが、一瞥して去っていく。  まるで興味すらない。 「じゃ、また来週♪」  応えられないことを良いことに、勝手な約束をしていく奴らに、無言で抵抗した。 『今日から道を変えて、財布の中は500円以上入れて行かないからな!』  こっちの決意表明なんぞ、届くわけがない。  一人静かに二人が去るのを待つ。  だが、二人は居なくなる気配がない。寧ろ上からなにか────。
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