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「アレってエロCMってことですか。ってこいつ!」
私はだらしなく鼻の下を伸ばし、赤い顔でキャバ嬢とイチャついている男を指差した。
「プロポーズするとか言っといて性欲満たしに前乗りしてたのか!」
「日向、お客様をこいつ扱いしない」
「こいつは違う。私の運命の人じゃない!」
「その事実は最初からわかっていたことだろう」
「モシモシ、僕ちんフルーツが食べたいなあ~」
「可愛いぃ~ ハイ、あ~ん」
「あ~ん。モシモシこんな素敵な世界があるなんて……知らなかった。知らなかった僕は不幸だ」
不幸、だと?
私は男の襟首を掴み、上下にブンブン激しく揺する。
「不幸なのはお前の彼女! お前を運命の人だと勘違いした私!」
「日向」
夜空は声を落とし、眼鏡を直す。
「これがSMというやつですか」
「惚けた面しやがって! 反省してんのか! 反省しろ! 反省!」
「あ……いい! もっと、もっとしてえ……!!」
気持ちが悪い。
咄嗟に手を離す。
「お客様は地球で言うところのMでございますね」
「モシモシMなのかあ」
「地球滞在を存分にお楽しみください。彼女到着まで一週間ございます」
夜空は揉み手をする。
「キャバクラ巡りもいいですが、地球にはもっと濃厚な性サービスのご用意がございます。明日のプランはいかがなさいますか?」
夜空の眼鏡がキラリと光る。
「ベーシック、更にその上にはアドバンスコースもご用意しております。独身最後なのですからハッスルしましょう」
「モシモシハッスルハッスル」
「ハッスルハッスルハッスル」
「モシモシハッスルハッスルハッスル」
うんざりだ。
勝手に盛り上がっていろ。
私はゆっくりと立ち上がる。
二人を見下ろし、冷たく言い捨てた。
「私、もう帰ります」
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