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デコパンチ。
「また!? 暴力反対!」
「お客様の来店だ」
夜空はお客様を出迎えるため、立ち上がった。
私も慌てて立ち上がる。
AIS旅行会社のお客様は特殊だ。
全員ある共通点がある。
涙目の視界にうつるのは、入国警備隊の徳城一路。
入国警備隊の制服に身を包んだ長身の徳城は、気怠げに壁に寄りかかるとため息を吐いた。
「お客様をご案内しました」
プチマッチョだと言うのに、なぜ何をするのも気怠げなのだろうか。
入国警備隊の仕事はお客様を旅行会社へ護送すること。
徳城さんは私と運命の人の架け橋なのだ。
「いらっしゃいませ」
期待に鼓動が高鳴る。
徳城はお客様を席に案内すると、デスクに寄りかかる。
お客様と旅のプランを相談するカウンターデスクは、半個室になっている。
「担当は夜空さんと……イタ子ちゃんですか」
徳城はため息を吐き、髪を気怠げに描き上げた。
「入国許可証、地球滞在用パスポートです。引渡証に押印してください」
夜空は受け取った書類に目を通しながら、
「サーセンモシモシ星か。今月で何人目だったかな」
「忘れました。イタ子ちゃんは初めてだよね」
AIS旅行会社は宇宙人専門の旅行会社。
お客様は全員宇宙人様なのだ。
「eaeイギリス人が多いのはなぜだ? 最近の傾向は長身、天然パーマ、黒に近いブラウンヘア、低音ボイス」
eaeとは装置の名称。地球の環境に耐えられるように出来ている。
もう一つの特徴は人間以上の力はでないこと。それから特殊な武器で簡単に拘束出来ること。
「三枝女史がイギリスのドラマ「シャーロック」にハマってるんですよ」
「ああ、なるほど。確か以前は韓流、その前は宝塚だったかな」
「eaeはお客様が選ぶんですよね? 勝手に選んで大丈夫なんですか?上にバレたら大変ですよ?」
「三枝女史は使えるうちに女の武器を行使していたそうだ。だから上に顔がきくらしい」
「……それって女性蔑視じゃないですか」
「誤解だ。三枝女史本人が豪語しているんだ。警備隊内で知らないものはいない。あえて話すことで威嚇しているんだろう」
「誰もが使えるものじゃない。お前には無理だ」
「そういう生き方もあるんですね。私は愛に生きます」
私が欲しいのは、運命の人だけ。
私の運命の人、見つけた。
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