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「モシモシ一週間後に彼女がこっちにくるんです。モシモシ彼女にプロポーズしたいと思って」
「サプライズでございますね。きっと喜ばれると思います」
プロポーズ……!?
私は崖から突き落とされた。
真っ逆さまに落ちていく。
「モシモシそれと……アレを」
「アレでございますね。承知いたしました。コースはいかがなさいますか。エントリ、ベーシック、アドバンスとございます。もちろん順々にレベルを上げることも可能です」
「モシモシエントリからお願いします」
「かしこまりました」
プロポーズ……プロポーズ……プロポーズ……。
邪魔をするなあああ!
グルグル回るプロポーズを払いのける。
これは何かの間違い。
バン!
私はデスクにしがみつく。
間違いでなきゃおかしいでしょ!
力を振り絞り、立ち上がる。
「プロポーズって誰にするつもりなの!」
「! モシモシ?」
「おい、日向」
「早まらないで!」
デスクという名の境界くらい飛び越えてやる。
デスクに足をかけると、夜空が背後から羽交い締めにして私を止めようとする。
「日向!」
夜空を振り払おうと体を激しくよじる。
「その女が運命の人だと言い切れますか! 言い切れるわけありません! だってあなたの運命の人はこの地球にいるのだから! よーく見て! あなたのすぐ側、目の前にいる――」
それ以上声が出なかった。
夜空の腕が私の首を締めたのだ。
「ヴ」
オチる。
私は力なく崩れ、座り込む。
夜空は怒りに満ちた顔で私を見下ろす。
人ひとり殺せそうだ。
「お客様」
夜空は瞬時に笑顔を作り、得意の揉み手でお客様に媚びる。
「突然で驚かれましたよね。申し訳ありません。三角関係を演出し二人の愛の絆を確かめるという、プロポーズの演出もございますのでそのご紹介でした」
「モシモシーー」
「この他にも人気のプランがございます。お客様のお気に召すプロポーズがきっとございます」
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