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お客様が言葉を紡ぐ暇を与えず、目の前にパンフレットを広げる。 「クルージングはいかがですか」 「クルージング……モシモシ船ですか。やっぱり地球は水の国なのですね! 僕の星では水に乗り物を浮かべる発想はないです」 「ただのクルージングではありませんよ。航路をハート型にするのです」 「ハート……?」 「ハートは地球では愛のシンボルです」 「おお!」 「東京湾に二人だけのハートが浮かび上がるのです。勿論目に見える形で。想像してください。夜の東京湾に二人、クルージングが終わるとそこにはピンク色に輝くハートが。二人で描いたハートを見ながら愛の告白。いかがですか」 「モシモシ! いいです!」 「ありがとうございます。他には映画館を貸切るプランもございます」 「映画館モシモシ」 「空間を貸し切るという面ではクルージングと同じです。このプランのイチオシポイントは」 夜空の巧みな話術に、お客様は引き込まれている。 「二人だけのムービーを二人だけで鑑賞するところです。想像してください。二人の愛の軌跡を振り返る。幸せだった思い出が蘇る。そこで愛の告白。ロマンティックだと思いませんか」 「モシモシ! いいです!」 「ムービーのほうも一週間ございましたら作成可能でございます」 「モシモシ! モシモシ!」
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