プロローグ

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「警察の発表では、全て窓ガラスをなんの細工もなしに叩き割ってそこから鍵を開けられて侵入していることが共通しているんでしたよね」  社会面を担当する麻香が、記者の顔になって発言する。  音無もそれに答えるように少しばかり真面目な表情になって答える。 「それだけではないわ。この犯行は全て素人の犯行よ。家の荒らし方は理に適っていないし、金品には取りこぼしが目立つ。玄人なら必ず見るようなところに隠してあったお金が無事だったことから見て、間違いなく素人」  その素人に三件も犯行を重ねられているわけだが、辻霧は特になにも言わなかった。本題はまだあとだ。 「三件目の事件の被害者は不運としかいいようがないようですね。理由はわかりませんが、彼は当時引きこもりだった。在宅だったのが彼だけで、たぶん犯人からすれば人の気配は傍目には感じられなかったのでしょう。闖入者と彼は鉢合わせてしまい、殺害されてしまった」 「そして今月、十二月の犯行は、それだけではなかった。もう一件、この板橋でも強盗事件が発生した。これまでひと月に一件、練馬区内での犯行だったのが、ついにこちらにまで犯行の手を伸ばしたようね」  そして嫌々ながら捜査に参加することになってしまったのが音無刑事である。 「報道は四件目の犯行ということで、警察を非難する目が向けられていますから、早急な逮捕が急がれる、と。わからないのはなぜその容疑者にうちの大学の准教授の名があるのかなんですよね」 「そう、不思議でしょうね。なぜそうなるのか。報道は強盗殺人としか報じていないものね」
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