真田君の背中

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バスケ部の男子がまたケンカしてる。 ここんとこ毎日だ。 好きな子は、なになにって廊下をのぞくけど私はとてもそんな気になれない。 父の会社が倒産したのはつい先日。そのしわ寄せがじりじりと私と母に迫ってきている。 会社といってもとても小さいものだったが、プラスチック製造の下請けでそれなりに仕事もあったのが、いわゆる連鎖倒産だ。あっと言う間に窮地に立たされ、あっけなく崩れた。 その時私は目が覚めた気がした。 終わりってくるんだ、と。 今通っている高校は私立で、私も何気なく進学先に私大を選択していたのだが、変更を余儀なくされた。 そう、何気なく生きていたから、選び取ったことなど全くなくて、与えられた選択肢はいつもそれなりのクオリティーだったから不足も感じなかった。 私はなんとなく居づらくて今までのグループを抜けて、二年に進級してからはひとり図書館で時間をつぶすようになっていた。 北側校舎の図書館はいつもひんやりとしていて悪くなかった。
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