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「あん?そこの娘は……甚平、お前の彼女か?
どっかで会ったことある気もするが。」
……こっちは他人説の信憑性が上がった気がするよ。
「あ、あの、ちょっといいっすか。」
少し詰まりながら聞くサメコ。
「二年前の夏にウチを不良から助けてくれたのは貴方っす……ですか?」
「ん?
…………あー、あん時の娘か、思い出した。
ドレッドヘアーの……遠藤とか言う不良に絡まれてたよな。」
「兄貴、越前じゃねぇの?」
「そうだったか?…そんな気もするな、うん」
はい、確定。
ズッコケそうになる結論だった。
サメコは興奮した様子で
「あ、あの、いつかお礼言いたいと思ってたんす…です!!
あの時は本当にありがとうございました!!!」
ペコぺコ頭を下げるサメコ
兄貴は鷹揚に頷きながら
「いーよいーよ、礼なんて。
別に大したことじゃないし。」
こう言える兄貴が俺は心底羨ましい。
「そう言われても、ウチが助けられたのは事実ですし……。」
「それはそうかもしれねぇけどな。」
何度か礼と謙遜のラリーが繰り返された後、兄貴がいい加減飽きたと、
「だからな?俺は別に礼はもういいんだよ。
言われる側が良いって言ってるんだから良いんだよ。」
「……そうっす…ですか、分かりました。」
「よし。
甚平、もう良いよな?」
急に話を振られてビビった。
「別に良いけど、妙に忙しないな。
何かあんのかよ。」
そう尋ねると、兄貴は照れたように
「これからデートなんだ。」
と宣った、リア充め。
去っていく兄貴を見送りながら、何とも言えない顔をしたサメコが
「ウチ、こんな時どんな顔すれば良いのかわからないんすけど……。」
と某有名アニメの様に呟いた。
厳密には俺への問いかけでは無かったかもしれないが、
「奇遇だな、俺もだ。」
と言わずにはいれなかった。
「………助けてくれたのが他人でも、俺を慕ってくれるんだっけ?」
沈黙は辛かった。
「そっすね、自分で言ったことっす。
……まさか事実になるとは………。」
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