片利共生

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 俺、海堂甚平(じんぺい)は港町の高校に通う普通の高校二年生である。  自分で言うのも何だが、多少人よりガタイは良いだけが取り柄の男だ。  「よう、ジンベエ!今日もごついなぁ!!」  「うっさいわ猫田、お前が小さいんだよ。」  「イヤイヤ、身長190、体重120は十分巨大だぜ?」  「それでもお前は小柄だろ、ネコザメ猫田が。」  「違いねぇ、クカカカカ!!!」  やっぱりこいつはよく分からない。  ケタケタと楽しそうに笑う猫田を放って教室へ向かう。    今日も一日、頑張ろう。  終礼のチャイムが鳴り響き、クラスの人数が減っていく。  部活に行く者、帰る者、教室で駄弁る者、まさに三者三様だ。  かく言う俺も、放課後は毎日通っている場所がある。  「ジンベエ君、今日もいつものトコに行くのかな?」  「そりゃ、そうでしょ。」  「正直、似合わないよね。」  「聞こえるわよ……まぁ否定はしないけどさ。」  「柔道とかやってそうだよね?」  「あ、それ分かるわー。」  キャハハと姦しい女子たち、聞こえてるぞと心の中で嗜める。  直接注意するには度胸が無い。  学校を出て、歩いて五分。  俺は近場の遊歩道を歩いている。  毎日同じコースで散歩をするのが俺の日課だ。  のんびりと日々変わる空を眺め、道沿いの花を愛でるのが何よりの幸せ。  これはもう五年続けているし、いつか街を出る日まで続けるのだろう。    行程の中頃まで来ると、一つのベンチがある。  そこには小さな子供達が集っていたり、杖を突いた爺さんが日向ぼっこしていたり、色々な人がいる場所だった。  だが、最近、そこを占拠する不届き者がいる。  しかし、日中からずっといるのでは無く、俺が歩く時間に合わせて座っているのだ。  今日もそこに差し掛かる。  予想通りと言うべきか、そこにはやはり一人の少女が座っていた。  「遅いっすよ、ジンベイ先輩。」  「やっぱりいるのか、サメコ。」  小羽紗子、通称サメコ。  心無い奴はコバンザメと呼んでいる。  俺の呼び名も暗にそう言っている様なものだが。  いつも黄色いニット帽を被ったショートボブの頭。  小柄な体躯、割と可愛らしい顔をした……まぁ美少女だ。
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