片利共生

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「そりゃーこの不肖小羽紗子、先輩のお供するのは当然っすよ!」  さっきの俺の問いかけの返事だろうが、正直何が当然なのかが分からない。    ある日突然現れて、お供しますなんて言われても戸惑う方が当然だろう。  少なくとも俺はそう思うし、それが一般人の反応のはずだ。  サメコ曰く、過去に俺に助けて貰った恩があり、時間が経ったがようやく見つけた、とか何とか言っていた。  だが、アイツの言う助けて貰った場所に俺は行ったことが無い、つまり、サメコの言うことは全くのデタラメという訳だ。  サメコが何を思ってそんな嘘を吐いたのか知らないが、そんな奴を信用することなど残念ながら俺にはできない。  何度か問い詰めたこともあるが、返事はいつものらりくらりとあいまいな物ばかり。  何を隠しているのかについては頑として口を割らない。  猫田以上によく分からない人種だと思う。  しかし、そんな奴と何故か俺は毎日一緒に歩いている。  向こうから近づいて来るのだが、俺も無理に突き放すようなことはしない。  彼女にどんな得があるのか知らないが、少なくとも俺には無い。  まさしく、ジンベイザメとコバンザメの関係だ。  毎日毎日、サメコはこちらが興味を示そうが示すまいが関係無くマシンガントークを開始する。  おまけに、その内容は一つとして同じだったためしがない。  ある時は株価の話、またある時は環境問題の話。  よくもまぁスラスラと話題が出てくるものだと感心しつつ、その話は聞き流す。  彼女の方も俺が話を聞こうとしないのはいつもの事だと分かっているので、俺のそんな態度は歯牙にもかけないで話し続ける。  だが、今日はいつもと少し違った。    「……ジンベイ先輩が返事をくれるなんて珍しいっすね。」  何の脈絡も無く話を180度転換したサメコ。  これもまたいつものことだが、明確な質問が投げかけられるのは珍しく、またそれに対して無視を返すのはいくらなんでも問題があるだろうと判断する。  「……つい口をついて出たんだよ。」  「あ、マジっすか?   それだけ警戒が薄れてるってことっすよね!?   いやぁ、うれしいっすねぇ。」  ニコニコと、本当に嬉しそうな笑顔で笑うサメコ。  やっぱりコイツはよく分からない。
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