片利共生

5/11
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 「テメェ!!嘗めてんじゃねぇぞ!!!」  嘗めてる訳では無いが、本当に思い出せない。  「……名前教えてくれよ。   悪いが、覚えてない。」  憤怒に顔を歪ませるドレッド、やがて吐き捨てるように  「俺ぁ越前だ!!!   聞き覚えが無いなんて言わせねぇぞ!!!」  …………全く聞き覚えが無い。  しかし、少し引っかかったことがある。  ドレッドヘアーで名前が越前、と。  「………エチゼンクラゲか。」  「あぁ゛!?」  耳が良いんだな、どうでもいいが。  「すまんが、全く心当たりがない。人違いじゃないか?」  海堂と言っていたし俺で間違いないだろうが、俺は荒事は嫌いだ。  案の定、信じてくれなかった。  「ふざけんなよ!!!   テメェみたいなごつい奴そうそういるわけねぇだろうが!!!」  それもそうか。  「おいヨっちゃん、もういいだろ、さっさとやっちまおうぜ。」  ニヤついた不良Cがそう言った。  ヨっちゃんとはクラゲ男の事だろうか。  クラゲも表情を汚い笑みに変えて、  「そうだな、おい海堂。   今からお前をフクロにするけど、悪く思うなよ!!!」  言うが早いか、殴りかかってきたクラゲ。   B、C、Dも同時に突っ込んできた。  こんな時体がデカいのは不便だ。  避けるには向いてないんだよな。  抵抗してもいいが、俺が耐えればいいだけだと拳を受け入れた。  「あの、ちょっといいですか?」  拳が当たる直前での第三者の声。  場違いなほどに穏やかな声だった。  路地の入口にメガネをかけたうちの生徒が立っていた。  俺には知った顔だったが、連中は知らなかったらしい。  止める間もなくクラゲが絡みに行った。  「おいおい、なんだテメェ?   痛い目見たくねぇなら退いてろや!!」  凄むクラゲ、しかしメガネの方はどこ吹く風と言い返す。  「いえ、彼はボクの知り合いなんですね?   だから集団リンチは止めて欲しいなぁ、と。」  「は?そんなん聞く訳ねぇだろ、殺すぞ?」  脅しをかけるクラゲ、ただ、彼の正体を知っている俺は止めるべきだと思っていた、クラゲの方を。  でないと、怪我人が一人じゃ済まなくなる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!