片利共生

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 サメコは公園のベンチでスマホを弄っていたが、俺が近づくと顔を上げて笑いかけてきた。  そのまま立ち上がり、スマホの電源を切ってポケットに突っ込んだ。  「お疲れっす、ジンベイ先輩。   いやー、災難だったっすねぇ。   で、全員沈めてきたんすか?」  「バカ、そんなことするか。」  「あや、そうっすか。」  天真爛漫な笑顔を崩さないままのサメコ。  本気では言って無いらしい、本気でも困るが。  「それよかサメコ、お前、あの連中の顔見たことあったか?」  「へ?」  怪訝な顔をしながら聞き返すサメコ。  全く心当たりが無さそうに見える。  だけど、こいつの考えは顔と一致していない。  追求すべきかどうか。  正直、怪しいと思っている。  サメコがあいつらに情報を流したんじゃ無いかと疑っているのだ。  それなら近づいた理由を俺に話せないのも納得だ。  ただ、クラゲと俺の因縁について全く心当たりが無いのだが。  それに、サメコが内通してたなら先輩達に連絡する理由が無い。    俺が悶々と悩んでいたら、サメコが呆れたような声を出した。  「まさか、ジンベイ先輩、ホントにあいつらの事分かって無かったんすか?」  「は?」  どういうことだ?  「じゃあ、ウチの事覚えて無いってのも本気だったのか…。   ……うわー、結構傷つくなぁ。」  一人でうんうん頷いているサメコ。  もちろん俺からすれば何のことかサッパリである。  「あ、すんませんジンベイ先輩。   いやー、ウチの事覚えて無いって、本当だと思ってなかったんすよ。   ウチからしたら、あんな大事件そうそう無いですし?」  「……すまん、分からん。」  「まぁ、そうと分かっただけマシっす。   でも、それなら出会った時の話しないといけないっすね。   正直、蒸し返すの恥ずかしかったんで誤魔化してたんすケド。」  ちょっと照れながら頭を掻くサメコ。  つまり俺は分かってる(はずの)自分の武勇伝を、何遍も言わそうとしていた自己顕示欲の強い野郎だった、ってことか?  それは……何と言うか、非常に恥ずかしい。  きっと俺は今真っ赤だろう。  よくサメコも離れようとしなかったものだ。
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