片利共生

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 「……さて、どっから話しますかねぇ。」  再びサメコと共に歩き出してから、彼女はぽつぽつと話し始めた。  「……二年前の話っす。   当時ウチは中二で、先輩は一こ上っすね。」  黙って頷く俺、口を挟めそうに無い。  「まぁ、分かりやすく言ってしまえば、ウチがショッピングとしゃれこんでたら、さっきの不良……知った顔はドレッドヘアーだけだったすけど、に絡まれたんすよ。   で、そこに割り込んできたのがジンベイ先輩、アナタっす。」  「え、マジで?」  「はい、マジっす。」  やはり全く記憶にない。  第一俺はそんな度胸を持ち合わせてなんかいないし、見て見ぬ振りか通報するかの二択しか選べない部類の人間だぞ。  中二病が完治してなかったとかだろうか。  「いやー、カッコよかったっすよ。   五対一くらいなのに、不良共を千切っては投げ千切っては投げ……。   あれを見て、ウチは一生ついていこうと決心したっすね。」  唖然とする俺を他所に、サメコは過去を見つめるような目で話し続ける。  「そん時は名前も聞けなかったんすけど、自分の学校にゃそんな人いなかったですし、こりゃウチの学校じゃ無いなって思ったんす。   で、わざわざこっちの学校に来てみたら、いるじゃないっすか、恩人が。   それが……去年の暮れっすかね。   そっから頑張って勉強して、偏差値一〇くらい違うこっちの高校に入って、全く経験の無かった格闘技部のマネージャーになったら先輩いないし……。」  そりゃあ、悪いことしたな。  俺悪くないけど、何故かそう思う。  「そしたら噂で先輩が毎日ウォーキングしてるって聞いたんで、見に来たらまさしく探してた先輩だったんすよ!!」  力説するサメコ、他人事じゃないからこっぱずかしい。  「でも、どうやって近づけばいいか分かんなかったんで、もうしれっともともといた風にすればいけるかなー、って思ったんすよね。   ほら、先輩ちょっと鈍そうじゃないっすか?」  「いけるかバカ。後誰が鈍いじゃ。」  「すんません、口が滑ったっす。」  ニシシと笑うサメコ。  真面目に謝る気は無さそうだが、その顔を見ているとこちらの怒気も削がれてしまうから不思議だ。  
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