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────あの頃、僕ら三人は少し複雑な関係にあった。
まあ、そう思っているのはたぶん自分だけで、他の人から見れば単純な三角関係ってやつだ。
僕はアヤミが好きで、アヤミはワタルが好き。きっとワタルも…。
あいつら凄くわかりやすくてさ、自分には望みがないってすぐに思った。
それでも、僕は二人から離れられなかった。
同じクラスだし、親同士も顔見知りだし…なにより、アヤミも、ワタルも大好きだったから。
たとえ“僕だけ”がただの友達でも、一緒に居られたらと思ったんだ。
だから二人から報告を受けた時も、上手く冷やかしてやれた。
「なんだよー。おまえらが付き合ったら、僕、邪魔者になっちゃうじゃないか。」
恥ずかしいそうに笑っていたけれど、二人はその放課後も僕に“帰ろう”と声を掛けてくれた。
「仕っ方ないなぁ!」
その時に決めたんだ。アヤミを諦めようって。
そんな僕の決意は、無事卒業まで三人の友情を守った。
あの二人は東京の大学へ行くことになっていたから、
この、胸の痛む日々ももう終わりだと少しだけほっとしていた。それなのに…。
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