3人が本棚に入れています
本棚に追加
そして今日、僕らはここに集まった。
悔しいけれど、懐かしくて…嬉しい。
アヤミとワタルは今でもうまくいっている。
いいかげん結婚も考えているけれど、ちょっと“問題”があるんだって。
カツン。
二人が見守る中、シャベルが缶を掘り当てた。
十年前の僕らを封じ込めたそれを、そっと持ち上げて振り返る。
「開けてみて。」
そう促したアヤミの声が、震えている気がした。
その手はワタルと強く結ばれていて…二人がとても緊張しているのがわかった。
その理由は明らかだった。
約束の時間より、ずっと早くからここで待っていたであろう二人の姿を道の向こうから見た時、“そうか”と思った。
あいつらが、タイムカプセルだなんて子供みたいな駄々をこねてまで、こうして会いたがったワケを…
繋がっていたかったワケを…。
僕は一つ息をして缶のフタを開けた。
中は、思ったより傷んでいることもなく、封筒の文字もちゃんと読めた。
驚いたのはその宛名。
自分だけじゃない。アヤミの字とワタルの字…そのどちらもが、僕の名前を呼んでいた。
十年前から、僕に三通の手紙が届いたのだ。
内容は読まなくたってわかる。でも…。
僕はそれを、一通、一通…大切に読んだ。そして、自分の“ずるさ”を思わず笑った。
“私は、男の子です。ずっと隠していてごめんなさい。”
“ボクは、女の子です。ちゃんと言えなくてごめんなさい。”
二人は、僕の知らないところで、まるで自分のものではないカラダを抱え、苦しんでいた。
アヤミのがさつさも、ワタルの穏やかさも、少しでも自らの“ナカミ”に寄り添いたくて…
いいや、それが本当の二人だったのに、僕はなにも気付いてやれなかったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!