第一章 隣に美人が引越してきた

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第一章 隣に美人が引越してきた

早朝、ガタガタと外で何かを動かす音が響く。 「なんなんだよー。朝早くから、うるさいなー」 信二はベッドの中でまどろんでいたのをいきなり起こされた。 昨日は一ヶ月かかって作り上げた企画書のプレゼンがやっと終わたので、 仲間と深夜まで六本木で飲んでいた。 だから体の中にまだアルコールがたっぷり残っている。 土曜日なので、ゆっくりと朝寝してベッドの中で昨晩の余韻を楽しんでいた。 それが、突然破られた。 ・・・といっても、まぶたはピッタリとひっついて開いていない。         ただ、外の雑音が頭の中でガンガンと響いている。 それでも、少しの間布団のなかでじっと我慢していた。 しかし、いっこうに静まる気配がないので、 眠い目をこすりながら ゆっくりとベッドから下りると、 ベランダから顔を出した。 すると隣のマンションの前で作業着を着た男たちがトラックから荷物を運び出していた。 ―引越しかー 信二はふっとため息をつき部屋に戻ろうとした。 そのとき、 「それはリビングにお願いします」 という絹糸のように細くやわらかで透き通った声が耳に飛び込んできた。 声の方に顔を向けると、 隣のマンションの入り口に、細身のジーパンにピンクのセーターを着た 身長160cmくらいのスタイルの良い若い女性が立っている。   信二は思わずベランダから体を乗り出した。 それに合わせるかのようにその女性が振り向いた。     長い黒髪がふわっと揺れ、一瞬白いうなじと端正な細面の顔が見えた。 信二の心臓がドクンと音をたてた。 「しおりさん」 危うく大声で叫びそうになった。
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